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Channel: 英国式自転車生活
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祈る姿

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くら~~~いR&Fの最近の趣味に2つあります。ひとつはお店の風前のともしび鑑賞(笑)。なんたってFUUJINですから。もうひとつはいろいろな場所で祈っている人を見ること。

とくに年末年始は観察する機会が多い。

英国に行ったとき、彼の地で、教会の中でお祈りしている人たちの姿に妙に感動した。本物なのです。日本だと、なんだかお芝居みたいな感じになっている人がけっこういる。英国だとかなり格式を感じさせるところもあれば、プロテスタント色が強いところもある。手の合わせ方も違います。指を伸ばすか、指を組むか。

こういう細部で属している集団がわかる。ギリシャ正教、ロシア正教だともう、十字の切り方が違う。親指を使い、左右の順序も逆です。見る人が見れば数秒でわかる。

イタリアの教会だと、さーーっと礼拝の途中で入ってきて、片膝をついて十字を切って、一礼してまた出ていったりする。いかにもイタリアだなと思う。

これは、すべての宗教でそうなのではないか?と思う。お遍路へ行って、誰かが御詠歌を歌っていて、「密厳流だ。智山派の同行和賛とお見受けした」と言う感じで、すべて、お里は知れてしまう。

座禅を組みに行っても、入って来る時の歩き方と手の組み方が臨済と曹洞ではすでに違う。

若かりし頃、まだ英国国教会とローマンカソリックが和解していなかったとき、ウィーンの教会のミサで、神父さんが私の前でぴたっととまり、「君はチャーチ・オヴ・イングランドに長く居た人か?」と言われてドキッとした。「えっ?!?!」どうしてわかったんだろう?とあっけにとられた。まあ、むこうも専門家ですからね。

こういうことはすべて、必ず出ると私は思っている。お経だって、般若心経の題に『仏説』をつける宗派と付けない宗派がある。

まあ、ここまではお作法の話。しかし、そのもっと深い部分がある。

いまから十年ほど前、或る自転車仲間と神社へ行った時、彼がたいそうさまになっていた。まったく違うのです。どういう背景の人かな?と思いあまって訊いてみたら、彼の父親が道場をやっているということでした。なるほど~。

私は『人間というのは新皮質がずいぶん発達してしまった、ある意味かなり変わった脳を持っているものだ』と考えている。そのため、『常にこころの中に考えている部分がある』。

この『考えている部分は生活には欠かせないわけですが、ものすごく邪魔な時もある』。不安にさいなまれる時などもそうで、これは豆腐を絹糸を縛るように、不安でこころがやられる。そういう時は『結局考えていることが自分を苦しめている』と、糸を切って、そこから解決策をさぐる。

自分の「無意識の世界」というのは(頭で考えているよりさらに深い自分のこころの中)すごい能力を秘めていると私は考えている。ほんとうは、そこでは答えや解決策はすべて出ている。だから数学の図形の証明問題などが解けないで悩んでいた時、朝目が覚めた時にふとひらめいて問題が解けたりする。それは「意識で問題を解こうとするのをやめても、潜在意識下ではこころはフル稼働で問題を解決しようとしている。

私はすべての宗教の祈りは、ここに秘められたパワーをいかに引き出してゆくか?から出ているように思える。坐っていて、自分の左の耳と右の耳の間に何もなくなったような感じ、時間も流れずに広がってゆくだけになった感じ、それは神社で「手を打って頭を下げたのが上手くいった時」と同じではないが通じるものがある。これはトランスに入るくらい真言を唱えた時にも通じる。

一方で、お経をあげている時はこころが2重に動いているのを感じる。唱えつつ漢字で書いてある部分の精読をものすごく速くやっている感じ。こころが2階建て2枚重ねで動く。

絵画でも他の芸術でも、陶磁器でも、刀剣でも、私は『意識的な部分で、頭で考えたものはすべて、底が浅く、つまらないものだ』という考えを持っている。偶然にすごく良いものが出来る、、、これはじつは偶然ではない。絵とか音楽の演奏をやっている人は必ずわかることだ。これは無意識界のパワーを総動員して、自分の過去の蓄積とかを使い切って、120%の力が出ることだ。

日本の伝統的なものは、工芸家から絵師、職人、武芸家にいたるまで、古来、そういうこころの使い方をしてきた。そこが理解されず、ただ単に「迷信」のひとことで片づけて、限られた自分の知識と能力で、こざかしく立ち回ってすごいものが作れると思っていたら、大きな間違いだ。

マックス・レーガーはいかに込み入ったフーガを書いても、セバスチャン・バッハを超えることはなく、レジェがルオーより良い絵を描くことはなかった。

どの宗教でも良い、今日の0時から明日一日、無心のうちに巨大な存在感を漂わせて頭を下げられるだろうか?

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