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Channel: 英国式自転車生活
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余裕

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いまから7~8年前までは、だいたい今の時期は仕事をしていなかった。クリスマスの時期はヨーロッパに居て、27日の午前十一時か午後1時ごろに英国を出て、29日30日で正月準備を済ませ、年明けの小正月までは日本情緒を楽しんで、2月の頭にはヨーロッパでのセール狙いでまた向うへ行くというパターンだった。

2月には洋服でも靴でも2割、3割、半額までになるので、私は一年分のシャツなどを買いに行っていた。ヴイェラのシャツでも1400円ぐらい。ウールのすごく良いタイでも1400~3000円。

これは『物を持つ』とか『高級品志向』ではないわけで、とくに私が20代、30代のころには『単黒』などはなかったので、「もっとも安く買う手立て」で、かつ使って具合がよかった。

1980年代は英国と日本のコーヒーカップ、ティーカップ、高級時計の価格差がきわめて大きかったので、カップ10~15個で飛行機代が出た。高級腕時計1~2個で滞在費と1年分の洋服と靴の出費はすべてカヴァーできた。いまはインターネットのオークションがあるので、PAYPALを使って買えば、海外から自宅まで物が届きますから、こういう経済は成立しない。

ある意味、インターネットが輸入に関わる全ての商売の隙間をつぶしたと私は考えている。海外での値段が即座にわかりますから。

これは家電やカメラの店が毎朝ネットで価格チェックしているのと同様、『誰一人儲からない薄利競争への道を準備している』。「えっ!あの会社が?」というようなカメラや家電の会社が消えたことを思い出してみるとよい。

そういう余裕のないところで、あらゆる職種がブラックな仕事化してゆき、誰もかれもがイライラ。電車内での口論、つかみ合い、荷物の配達屋は地面に荷物を叩きつけて憂さ晴らしをするようになり、路上の暴力も増える。この様子は自動車の運転などにもはっきり表れてきていると思う。

こう言う時代には、自分のクルマには昔の「宇宙家族ロビンソンのジュピター2号の電磁バリヤー」のようなものが要るなと思う(笑)。

1980年代までの輸入物関係の人たちは、かなりむこうでの生活や文化に造詣が深い面白い人が多かった。それは商売にも生活にも余裕があったからだろうと思う。

10万円を200万円にして190万円儲けるのはたいへんだが、1000万円を1190万円にするのはたやすい。そういう便利社会・無隙間社会というのは、後者のような資本力勝負・資本体力勝負になってきている。

私なども早々に、インターネットの影響を見越して、路線変更をしましたが、ものを書いたりする世界も、いくらでもコピーされるので金をとれるまでに行かない。出版はすべてよろしくない。

大規模古書店に町の古本屋がやられて壊滅状態になり、今度はその大規模古書店が赤字になっている。あげく、ヤフオクなどに大規模古書店が大量出品するようになった。だいたい大規模古書店の店員は書籍に関する知識はゼロといってよい。彼らは本を読んでいませんから。

かつての古本屋の主人と言えば、本好きが店をやり始め、店番をしながら在庫の本を読んでいたので、ものすごいインテリがいた。そういう人に芥川龍之介の全集が何種類あるか?と訊けば、岩波ので何回出ているとか、筑摩でも出ているとか、何十種類も例を挙げ、うちには岩波の新書版の青い布表紙のものと、未定稿集しかない、どれかわかれば、今度市に行った時に買ってきてあげます、とか言われた。

いまではこういうことはまったく不可能になってしまった。

すごく軽い流通屋が増えて、プロフェッショナリズムの人が減るのではないか?

今日は取引先へのあいさつ回りのあとで、神社とお寺にお札をもらいに行ったりして、途中で何件かの古本屋をのぞこうと思っている。今日は29日で正月の飾りは『苦かざり』になるので、今日は準備だけで、飾りつけは明日。そうすると31日にやるのは『一夜かざり』でよくないのを避けられる。

だから、意外に伝統的な日程は詰まっている。それが忙しく感じられて『師走』だったわけだが、いまや、そういう忙しさは一年中になったような気がする。

ネットで便利になって、余裕ができるなどと言うのは大きな幻想だと思う。これからますます逃げ場のない未来が来ると思う。今のうちは荷物を地面に叩きつけている具合だが、やがては仕事を奪うロボットや人工知能の打ち壊しとかが出てくるのではないか?それに対して、自己防衛システムを備えた人口知性を作ったら、もはや人間には制御できず、人間は機械にやられかねないと思う。

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