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Channel: 英国式自転車生活
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5000ページの無駄

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はからずも、今朝、はっきりしたことです。まあ、ブログでいくら書いても『無駄だ』ということです。きりがないと思う。

1960~1985年ぐらいまでの自転車雑誌を見ると『オーダー車は3台作って失敗しないとピッタリ合ったものが手に入らない』というのが常識でした。今の50~70歳代のヴェテランはみなさん御存知。

それではたいへんだから、ステムを50mmから70mmに替えたり、逆に90mmから50mmに替えたり、あるいはハンドルバーを違うグリップ位置のものに替えたりして、自分の寸法を出す。

その寸法は『自分でつかむよりほかはない』。

フランスの工房で作ってもらった人の中にはトップが長すぎて困っている人が少なくない。ラテン系の人は腕が長いですから、ビルダーにその寸法感覚が沁みついている。

昭和天皇は戦前は眼鏡が合わなくてたいへん苦労されたという。それは戦前は検眼士が直接話しかけることを禁じられていたから。合う合わないは自分にしかわからない。

それが有名どころのものを手に入れれば解決と考えるのは、『自動車、家電的発想』なわけです。

家電で「お客様の手は小ぶりなので、アイロンの握りを細くいたしましょう」などということは絶対やらない。自動車で、「お客様は座高が低くていらっしゃる。ボンネットとサイドシルを15cmお下げいたします」などとはありえない。着座位置から見てボンネットを15cm下げるなどというのは、エンジンの背丈を変え、新規に自動車を一台開発するのとほぼ同じ価格がかかるだろう。

ところが、こうした誤った購買姿勢の人が自転車界の購買層にはたくさんいらっしゃる。

「一台まずは手に入れて、それをたたき台にして、はっきりと自分の寸法などを掴んだうえで、再度オーダーするというのが1960~1970年代は当たり前だった」。

とりあえず、一番高い腕時計を買って、それを一生使おうというのと同じ発想は、眼鏡、自転車、スケート靴、スキーには当てはまらないはずだ。

それが、現在、台湾製のお尻が痛くてどうしようもなく、ポジションも出ない車両に乗っているまるで素人の人が、うちの自転車のノーマルスペックを否定するというのはどういうことだろう?

あまりにそういうことが多すぎる。先日、わざわざ『変速具合が良い、20年以上前のサンツァーの珍しいフロント変速機をつけたら、ケチをつけられた』。『カンパのスライド・シャフトのFDではないんですか』という。敢えて言いますが、サンツアーのワイドが拾えるFDがあれば、カンパのグランスポールのスライド・シャフトのFDなどは使う必要がない。60年前のもの、しかも52T×47Tとかの接近したレシオ用の変速機です。

あの円が弱い時代に、宮田やBSのスポーツ車が3万円ぐらいだった時、対米輸出用のイタリア製の安物スポーツ車が24000円だった。マグニとかあとイタリアではないがキオルダーの安物もあった。そういうのにはスライド・シャフトのカンパのFDとスポーツマンのRDが付いていた。安物じゃないか。

TAがプロフェッショナル・リングでインナー45Tが入るようになって、みんなどよめいたわけです。「そんな小さいインナーが使えるのか!」と。それまではインナーはサンプレのリングなどでも47Tがロード用ではメインだった。ジャン・ロビックなどでもクブレでもインナー47Tでツールを走っていた。

その時代のスライドシャフトをワイド・レシオで使うというのはもう、変速技能のない人には使い物にならない。

実際の話、うちの車両の価格はグラントがやっているブランドの泥除け無し、キャリア無しと同じ価格になっている。うちはキャリアが付いて、ラグレスでやっている。すべて手作業でやっているわけで、ラグ付きフレームのように仕上げ時間を短くすることはできない。それをさらに手組ホイールでやっているわけで、異様に安いわけです。

手でフレームに合わせたキャリアをやってもらったら通常は何万円かかるのか?ハンドビルト・メーカーによっては、過去にその工房で制作されたフレームを持ち込んでもキャリアの製作は受けてもらえない。実際、溶接ポイントと仕上げ時間はたいへんな時間がかかる。

さて、さらに日本だと、盲目的に「最高級グレードなら一番いい」と考える人たちが多い。

これは考え方がおかしくないか?たとえば黒酢酢豚の美味いのと芙蓉蟹とダックスープのあっさりしたのが食べたいと店へ向かった人が、メニューで一番高いからと海蛇のスープと熊の掌で満足できるのだろうか?

自転車の場合、乗って具合が良いかどうか?がすべてなのだ。

マビックのリムに『スポーツ』と『プロ』があるのは、ロードレースの競技用とサイクリング用の別であって、サドルに重さをかけるツーリング車に幅の狭いプロを使って何か利点があるのか?リムが狭ければ中の空気量も少なく乗り心地は悪い。

またリム巾が狭くなれば、コーナーリング・フォースも、同じタイヤを使っても変化する。ロードレーサーなら、リーン・イン、リーン・アウトするだろうが、アップハンドルでは基本常にリーン・ウィズなわけです。

プロに替えてみたらコーナーリング特性が悪くなるのがわかるはずだ。

このような話は、本来雑誌が教育する話だと思うのだが、ミニチュアカーの専門家が自転車雑誌を編集していたりするのだから、しわよせがビルダーなどのところに来る。

基本部分が理解されずに「ゆずれません」とノーマル・スペックにないものでやりたいと押して来られても、受ける受けないはうちしだいですから、今のまま台湾製でお尻の痛みをこらえて乗ってればいいんじゃないですか?と言うほかはない。

実際、ノーマルのスポーツ車用のチューブとは、原材料段階でこのくらい長さが違う。

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