歳をとるにつけ、『仕上げの鋭い、シャープなものが嫌いになってきた』。
理由は単純で、『自然のものと調和しないから』。
ほんわかした、人間味のある柔らかい線のものがあきない。
英国のおおらかな時代のラグカットが私は好きだ。50年代のゴシックカットなどは見ているうちに、見飽きてくると言うか、イライラしてくる。イタリアンカットも無個性で完全スルーです。
仕事を上がる直前に、頼まれもののレストアをすこしやる。フォーククラウンは1910~20年代の英国3大クラウンのひとつ。ラレーのチューブラークラウン、ラッジのなで肩、トライアンフのげんこつ。
大正時代には、このげんこつクラウンは御老公の印籠のような威厳があった。なで肩はチネリもやったし、チューブラークラウンはコッピもピジョンも真似した。
このげんこつだけはトライアンフ以外どこもやっていない。
こういう純朴な造形にこのごろはシビれる。