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Channel: 英国式自転車生活
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自転車の塗装

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30数年前の昔、JのMの親爺さんが面白いことを言っていた。
「それは、アナタさぁ、味のある塗装とか言うけど、偶然の部分も多分にあるんだよ。そぅ。スプレーガンで吹いているのがもう半分うまく霧が飛ばないようなのでやると、なんか人間臭くって良くなったりするもんなんだよ。フランスのなんかすごくムラんなってるもん。」

私は笑っていましたが、たしかにそう言う気がしなくもない。あそこの奥の鴨居にはフランスのA.S.がぶらさがっていたが、塗装はかなり甘かった。しかし、それも含めてヨーロッパのやわらかい手作り感がただよっていた。

英国のクロード・バトラーには『流氷がこまかく割れたような、クラックル塗装』というのがあった。誰ものちにあの塗装を再現した人はいない。

私はあれは『ハンマートーン塗装』を工夫したものではないかと思う。

仕上がりは違うけれど、ハンマートーンとちりめん塗装は原理は同じものです。私がいた会社は精密機械屋だったので、ハンマートーンや鬼ちりめんの塗装はたまにやっていた。あれは実に厄介なのです。揮発性の酸を使うので、あれをやると、他の塗っているものがすべて影響を受ける。

たぶん、クロードがクラックル塗装をほんの短い期間でやめたのにはそう言う背景があったのだろう。

クラックルのもの1台で、ほかの30台分ぐらいの金額をもらわないと、工場あがったりでしょう。

そんなことを書いたのは、うちへたまに来る熱心な若手に静電塗装の話を訊かれたから。

静電塗装を理解するには、工場の煙突から出る粉塵を電気的に吸着する『コットレル式集塵機』のことを考えればよい。

その集塵機の高圧電流発生装置を利用して、フレームに10万ボルトぐらいの高圧静電をかける。それに霧状に噴霧した塗料にマイナスの帯電をさせてフレームにむらなく吸い付けられるようにしていた。

それを赤外線乾燥機で乾かすと、15分ぐらいで焼き付けが完了する。

それが日本で使われ始めたのは昭和24~25年ぐらいのことです。

だから、その時代の実用車の、飴の表面の濡れたような、とろっとした塗装を剥離して、今の自動車用塗料などでガン吹きで塗ったら、味もそっけもないものになってしまう。

我々がたとえダメージがひどくてもオリジナル塗装を残そうとする理由はそのあたりにあります。

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