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Channel: 英国式自転車生活
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ストレスとのつきあい方

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現代ではストレスまみれの生活をしている人がほとんどだと思います。

過度のプレッシャーがかかると、心臓がさわさわするような、そういうストレスを感じる人は少なくないと思う。

自転車のフレーム・ビルダーの大半の人が、心臓系の疾患か脳溢血、クモ膜下出血で倒れるのは、ロウ付けの金属蒸気やフラックスの蒸発した物を吸っていることもさることながら、ズバリ!

「納期ストレス」だと思う。

そんなにジャンジャン作れると思っている人には、「ヤスリかけ体験」が良いのではないか?と思う。
「ほら、何やってるんだっ!あと15分でヤマトが取りに来るんだぞ!」
「いや、とても無理です。明日になりませんか?」
「だめだっ!あと15分で何としてもやりとげろっ!これは最後通牒だ。1日遅れれば、乾かして窯に入れる日数が週末はさんで4日のびるだろ。15分しか待てないっ!」
いやー、そういういじめをたまには役割交換でやってみたい(爆)。

かけ損じたら一本パアですから、急いでいることに加えて、そういう『失敗恐怖のストレス』もある。

昔、夢二記念館の大物の建築材料を輸入した時、「そういう仕事は良いですね」と憧れている人がいたので、「それではやってみなされ」と200年ものの鍛造ゲートの錆落としと腐ったサビの部分を落として、溶接修理の前段階をやらせてみたことがある。

その方、6時間で音を上げました。

「ここまでやらなきゃいけないんですか?」
「そうだ。そうしないと、あとで下から錆が広がってきたら2度手間になる。」
「新しくリプロを作ったほうが早くありませんか?」
「作れるものなら作ってみろ。」

6時間後、「いや、僕はもうだめです。申し訳ないですけれど、手は痛いし、根がつづきません。」

だらしのないやつ。

最終的に、手すりの鋳物の部分の修理は仁さんにやってもらった。
「R&Fさんはいつも変わったものもってくるけど。これはずばぬけてるよ。こりゃ~、ビルダーの仕事じゃなくて、野鍛冶の仕事だよ。」
「まあまあ、そう言わず。東芝の工場で鍛えた電気溶接でも名手の腕を見込んでのことだからさ。」

「後ろに立ってられると、先生に監視されてるみたいで気合が入らねぇ。失敗しても知りませんよ。」
「じゃあ、向かいのスーパーでコーヒー飲んでくる。」

彼は晩年、5時過ぎると気力が抜けて疲れ果てていると良く私に語っていた。

たぶん、ストレス過多な場合、血液中にあまりよくない興奮させる要素が流れている気がする。それでやる気を引っ張って、引っ張って、無理をして仕事をこなしている状態なので、身体が持たないのだろう。

建築では何十人もの人のスケジュールに絡む工期の問題があるので、そこでかかるストレスも半端ではない。しかも船便で巨大ゲートや教会のピュー(ベンチ)などを運ぶと、途中での船の積み替えが入る場合があって、船腹がいっぱいで、2か月、3か月遅れることもあるので、さらにたいへんだった。船ですから海がしけている時などは、荷崩れで、コンテナを開けてみるとダメージがある場合もあった。それはそれでたいへんで、海事協会なども絡んで、状況を見せて、書類作業が増える。

その時の『心臓のサワサワする感じ』は、じつはクルマやレーサーを飛ばしている時とどこか似た部分がる気がした。確かに飛ばしている間は気が張って、戦闘的になり、気分が晴れた気がするが、それは『速度で勝つことによって、脳をだましている』感じのストレス発散で、その爽快感の裏で、血管や心臓はかなりのストレスを受けているように思った。

それをきっかけにだんだん速度を求める走り方をしなくなった。

材木屋で、やはり納期がからんでいることでストレスで心臓をやられた人を知っている。引退して、娘が段階的に仕事の規模を小さくして廃業した。

あらゆる職人仕事はそういう道筋をたどらざるおえない。自転車なども例外ではない。

そうしたストレスから身を守る方法は、『短時間でこころのフレームワークを変える』習慣を持つことだと思う。ある人にはそれが園芸や植木であり、ある人には自転車での徘徊。

私はお守りとか、勾玉なども、昔からのそういう自己コントロール法のひとつではなかったのかと思えてならない。豪族とか武将とか、人の上にたち、恨みをかいやすい人はやはりストレスも半端なものではなかっただろう。

そこで、勾玉で石を眺めたり、象徴的な図柄の刀の鍔をみたり、根付などをもてあそんで、「こころのフレームワークを瞬時に変えた」のだろうと推察している。

納期のストレスや仕事上の困難は、『失敗の不安のストレスに近い』。それを安心させるために、刀鍛冶でも宗教的儀式で、脳波の乱れを押さえるというか、『こころをそちらへ持ってゆく』ようにしたのだろうと思う。

そこが理解できない、機械的にできる仕事でしかものごとを計れない人は、たぶん、いくら良い職人仕事のものを手に入れたところで、一生ほんとうのところはわからないのではないかとこの頃は考えている。

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