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Channel: 英国式自転車生活
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トゥルーテンパー撤退

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アメリカのハンドビルトのフレームビルダーは、ここ30年ばかり、多くがトゥルーテンパーのクロモリ材料を使っていたわけですが、どうも収益性が悪くてあと1年で撤退するらしい。

北米にはこのところ100を超えるハンドビルドの工房があらわれていたわけです。

それはなぜか?というとアルミ合金だのカーボンだのの、『ヤング率の低い材質でフレームを造る』となると断面積を大きくして剛性を上げざるおえず、そうやって剛性を上げたフレームでは『ひざをやられる』というのがわかってきて、スチールが見直された。そういう人たちがもう、材料がなくて作れなくなる日が1年後ぐらいに迫っているということです。

まあ、それがここ20年~30年で『安物買いの見識の低いユーザーたち』によって自転車価格が崩壊して、フレーム材量メーカーも立ち行かなくなって撤退ということになったわけです。

トゥルーテンパーは今年いっぱいぐらいは最終注文を受けると言う。

いや、だいたいうちのバルケッタなどでも、イタリアにはフレーム材量となるチューブがないんですから。イタリアのチューブで「昔ながらのインチサイズを探すのは至難の業」。だから、昔の名車の復刻のフレームはたぶんイタリア製の材料ではないのだろうと私は見ている。多くのイタリアの名門メーカーの下請けのビルダーであり、フレームチューブメーカーの子会社の、ボネッティが「無い」と言ってきた。

だからうちではオール国産に変えた。

レイノルズだって、親会社のTIが潰れて以来、点々と国籍を変え、いまや台湾製のはず。かつての英国製のレイノルズ531とは縁もゆかりもない。

かつてのレイノルズ531は「親会社のTIから来るスチールをチューブにしていた」加工会社なわけで、レイノルズ531が良かったというのはTIから来るスチールが良かったということ。レイノルズが納品された材料をいったんブラストファーネスで溶かしてマンガンを足して、さらに圧延、、などということはやっていない。私は30代の頃新日鉄さんの仕事をしていたことがあるので確かです。

フレームのエンドとかを作っていたタカハシテクノも、自転車用のフレーム材料の製造から、とうの昔に撤退している。

それもしかたがないのではないか?「桐の金蒔絵の火鉢のよさがわからない人は、家の中でコールマンでお湯を沸かしていればいいんだ」と私などは暴言を吐いている(笑)。

ハンドビルトのスチール・フレームの自転車は桐の火鉢だから。

それは、いわば陶芸家に粘土がなくなるようなもの。「これでなんとかなりませんか?」と小麦粉で作った幼児用粘土を渡しても、伊万里も備前も信楽も焼けはしない。

『今すぐ乗りたい。今週末にも乗りたい』とかいうのは、「長期計画で趣味を構築してこなかったその人の問題で、供給者がわの問題ではない」。私などでも消費者側に長年いましたが、半世紀の間、スチールフレームの快走用車とアップハンドルが手元にきれていて乗るものがないということはなかった。

自動車を所有しているということは、ガソリン代、駐車場代、車検費用や初期投資の価格、点検・整備・修理費用などをならして考えると、月に6万円ぐらいは使っているはずだ。一度に来ないからその実感がわかない。

一方でそういう出費は許し、自転車には金を惜しむ。安物を買って、乗らなくなり、うちの町内でもいま粗大ゴミで、梅雨前の草むしりと駐輪場の片づけで30台以上安物輸入自転車が出ている。たいへんな無駄であり、そういう消費行動に満足感は無い。見ていると3~6年でゴミです。

それは、「そういう見識の人たちが形作る市場と、それを追いかけて安物づくりにまい進したマーケティングと、それを支持した消費者のたまもの」。

私はもう晩年だし、自分が残りの人生で乗るものはあるから、「浮世絵の隈取りみたいなカラーリングの輸入安物に乗り、人に言えない密かな膝の痛みや、腰や首の痛み、股間の痛みに耐えつつ乗っている人たち」を、横目で見て「Pity!」と言うしかありません。

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