このごろは実用車を直して乗ったり、古いレーサーをスチール・クランクで乗る人もけっこういるようなので、コッタード式クランクも一時よりは話題になるようになってきました。
今日はコッタードのクランクの車両を3台ほど片を付けなければなりませんでした。
コッタード式にもよい点はいくつもあり、まずクランク自体を細くできる。締め込んだり、長年の使用でクランクのチェンラインが動かない。コッタ―ピンは、機械加工が出来る人なら作れるので、つぶしがいくらでもきく。
さらに1~2mmはチェンラインを動かして調整できる。シャフトが豊富で、スペアのスピンドル(シャフト)に困らない。
あまり知られていないことですが、日本のコッタ―ピンと英国のコッタ―ピンは違う理論で作られている。どういうことかというと、日本のコッタ―ピンの多くは意図的に柔らかく作ってあります。これは擦り合わせをを楽に行うため。ところが時として、そのために曲がってしまって抜けなくなったり、大手術になることが少なくない。
一方の英国のコッタ―ピンは、『チェンのピンのものすごく太いような硬い材料で作られている』。なので、シャコ万力で力をかけるとスコンと抜けます。入れる時も同様。
コッタ―ピンにはいくつも種類があり、長さと斜面のつけ方が違う。
ゆるい角度で長くついているのを『浅取り』、急な角度でざっくり深くはいっているのを『深取り』といい、さらにそれに長いものと短いものがありました。日本では削って合わせていたので、種類があまりない。英国ではずいぶん細かく種類がある。砥石のような、はっきりと基準面が見えるものの上で研がないと、平面が出ず、こいでいるうちに中で変形して、抜くとき大手術になります。
あとは左右が一直線になるように微調整を擦り合わせでやる。そういうことをやれる人も少なくなりました。
あと、コッタ―ピンの種類はフランス式と英国式に大別できます。フランスのものは細い。だからフランスのコッタード・クランクを買っても、BSCでなかったら、まず使えない。日本ではフレンチの細いコッタ―ピンはまずどこの店も持っていない。これはシャフトのほうの『えぐり』も違うので、日本のシャフトも合いません。
英国のクランクは1928年ぐらいまではかすかに細い。戦後はかなり太いものがメーカーによってはあるので、クランクとの相性をまず確かめるのが肝心です。
宮田は今から40数年前、デミ・コッタ―ピンを打って固定する独特のコッタレスを作っていました。なかなかのすぐれもので、ニードル・ローラー・ベアリングのボトムブラケットのものもあった。これはストロングライトがそういうニードル・ローラー・ベアリングものを競技選手に供給していて、そこからルネもユニットのBBを使っていたのを宮田が知っていてやった意欲作でした。ただたいへんコストがかかったことが推測され、サンライズなどのごく一部に使われて、数年でアルミのずんぐりしたクランクに変わってしまいました。
私はこういう細くてふみ心地がよく、『律儀な機械の形をしたコッタード・クランクが嫌いではない』。