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Channel: 英国式自転車生活
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赤ん坊粗製濫造?

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ネットのニュースを見ていたらカバンに入るベビーカーの話が載っていました。

いまどきの人は意外に思うかもしれませんが、私の人生で『ベビーカー』という単語が現れたのは古いことではありません。

長いこと時代は『乳母車』でした。

その前はおんぶにだっこ。

日本の乳母車はコイルスプリングのサスペンションのものが多かった。

1980年代半ばに、英国のドーヴァーの近くの骨董屋で素晴らしい乳母車を見て欲しくなったのを覚えている。巨大な『勾玉のような曲線のリーフスプリングに浮いて、ロールスロイスのシルヴァーゴーストのような幌が付いていた。ちょっと日本では見たことがなかった。

私が飽きずに眺めていたら、後ろから声がした。
「ゴージャスじゃないこと?20世紀初頭のものですわ。」
振り返るとアイルランドのリネンセーターにグレイのコットン・パンツにブーツのドロシー・プロヴァイン似の女性が立っていた。
「Indeed, indeed.素晴らしい。快適さが優雅さとともに通ってゆく感じですね。」
「どうしてこういうものが廃れちゃったんでしょう。赤ちゃんは頭蓋骨がまだくっついていないでしょう?頭のてっぺんがまだ育つ脳のために骨が隙間をもっていますね。」
そういって彼女は自分の頭を両手のひらで包んだ。
「そういう繊細な赤ちゃんのために、ヴイクトリア・エドワード朝の人たちはこれほどのものを作ったのです。こどもは今より大切に育てられていたと思うわ。」
「近年は『赤ん坊はByーproduct』ぐらいに考えている人が増えましたからね。これは乳母車のロールスロイスだ。」
彼女はたいそう笑った。

真剣に持って帰ろうと思いましたが、ケンブリッジに持ち帰れば、「準備が万端だな」などと言われることは目に見えている(笑)。やがてこどものかわりに自転車のサドルや部品が載ることも充分ありうると思って踏みとどまった(爆)。

私が気になって仕方がないのは、最近のベビーカーのガラガラいう音と振動です。あれは赤ん坊にとって良いと思われない。台車の上の荷物のようにゴトゴト振るわされている。

ヨーロッパでは、ほんとうにやんごとなき人たちは振動の多い車輪付きの乗り物には乗らず「セダンチェア」という駕籠でした。コクトーの映画『美女と野獣』にはベルの意地悪な姉2人がセダンチェアで舞踏会に出かけて行くシーンがあります。自動車の車種の単語「セダン」もそこからきている。

私がこども時代、赤ん坊は『首がすわる』まで、外出はさせないのが普通だった。ある時から、トイ・プードルやミニチュア・ダックスを連れ歩くように、生まれるやいなや連れ歩いて見せびらかしているのを見かけるようになった。

ガタガタ揺すられる乗り物に乗せられ、赤ん坊は受難の時代になった気がする。おんぶに復権を。

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