現在、ウィキペディアで「ポタリング」を引くと、「和製英語」と書いてあります。ネット上でもそれが反復されて、ご丁寧にちずかさんが最初に考案した語だと書いてあるのものも多い。
これを聞くたびにに私はイライラするので、ここにはっきり証拠として写真をアップしておきますが、ポタリングというのは19世紀から使われていた語です。古い文献を読むとでてきます。
アップした写真は1891年に出版されたバドミントン・ライブラリーのなかの1ページ。
当時はランブリングより短い、ほんとうに家の周りしか乗らないことに対して使われていた語です。
1891年というのは、まだ前輪の大きいダルマ自転車なども走っていた時代ですから、乗車技術のない人にとって、自転車はそんなに遠くへ行くためのものではない、という、「家の周りでの遊び」程度に考えている人が多かった。
それが「セイフティー自転車」(安全型自転車)という、現在の前後ほぼ同じサイズの自転車の登場により、可能性が広がり、荷物も積めるようになった。
音もなく、馬の力によらない旅人が自転車で遠くから自転車でやってくる。
ラッジ・ウィットワースは世界最古のセィフティー自転車のメーカーと広告にも書いていた。その頃、ラッジは前輪の大きいダルマ自転車も作っておりこれを『バイシクル』と呼び、安全型自転車を『ビシクレット』と呼んでいました。レットというのはリーフレットのレットと同じで小さいことを表す接尾語です。
しかし、ビシクレットという語はバイシクルよりポピュラーな語にはならず、ラッジは新たな商品名を考え出します。それが「レーサー」に対しての「ロードスター」という語で、じつはロードスターという単語はラッジ・ウィットワースの登録商標だったのです。
そういういきさつがあり、ラッジの商標が切れるまで、ラレーもBSAも『ロードスター』という呼称は自社の製品に使えませんでした。
いまやロードスターは自動車でも使っていますが、本来は自転車の登録商標です。
馬以外に、鉄道が敷かれていない地域へ旅する手立ては自転車以外になかった時代、村はずれに当然出現するロードスターは、当時、一般庶民にはとうてい手が出なかった「最新の鉄の道具」として驚きを持って眺められたことが多くの文献に残っています。
その感動を自転車にふたたび呼び起こしたいものです。
こうした自転車の出発点の基本のことも知らず、誤って伝えている自転車雑誌やサイトはすべて「眉唾フィルター」を通して読まないと、せっかくの自転車趣味も、傾いた土台の上に建てた建築のようになってしまうと危惧するしだいです。