「まあ、天善さま、お茶でもどうぞ。三袋1000文だったんですが、とてもそう言う味じゃないんでございますよ。」
「うむ。悪くない。」
「たぶん。ここまで安いものは競争も熾烈だと思うのです。九州の名もないところのものですが、なんとか江戸の市場に名がないながらも食いこんで行こうと薄利でやっておるのでございましょう。」
「ところで商いの方はどうじゃ。」
「毒塵壺の件以来、日本はどんどん悪くなったのではありませぬか?昔でしたら遷都を考えねばいけないほどのことであると思いますよ。悪政の世でございましょう。」
「そう言えば、何日か前、ちょうど彼らの聖者を愚弄した者がいることで知られる阿波の國で地震があったな。電磁砲弾列車が走る予定の天竜川のあたりでも地震があった。あそこはフォッサマグナのあたりであるから、何か地震が来たら桁ちがいになろうな。」
「天を味方に付けていない気がいたしますようで。」
「余もそう思う。」
「どうも心晴れぬ世の中じゃ。そこへくわえて取税人の季節も近づいておるしな。」
「どうです。天善様もいずこへか旅にでも出られては?」
「そのような余裕はないな。ただ忙しさに埋もれるのみじゃ。それより思うことがあるのだが、もし、どこかで新たに毒塵壺が破裂するようなことが起こった時、我々は逃げられるであろうかな?通行手形をお上が取り上げるのではないかな。」
「ありえることでございますな。それよりも、避難をするもの、國を出たがる者が万の桁にでもなれば、どこの國も受け入れてはくれないでございましょう。」
「おぬしは妻女がむこうの人である故、彼の國の飛行客船の切符は優先的にとれたとか申しておったな。」
「さようでございます。相馬藩の毒塵壺の一件のとき、飛行客船は満席でございましたが、彼の國に家族のある三親等の者までは無条件に優先的に席が取れてございました。かの國では、そこにいる自國民を脱出させるのが急務と考えておりましたゆえ。」
「立派じゃな。この國では地震でも道路を閉鎖して、民をどこへも逃がさず、自宅で果てさせるつもりであるからな。幕府の失態で住めないような状況になっても、空の船の港までもたどり着くことも出来ぬ。」
「しかし、このようなことは続かぬと思います。やがて、どういうことかわかりませぬが、『ばち』が当たると思います。天善様の世代までは『ばちが当たる』と言いませんでしたか?」
「そう言えば、『ばちが当たる』などとはずいぶん久方ぶりに聞いた。」
「わたくしはそういうものはあると思いますよ。」
「世の中、多くの要素がからみあって、なかなか本筋が掴みがたいものだが、悪い奴はそれを逆手にとって、どんどんなし崩しに悪い方へ引きずってゆこうとする。
五年前までは少々景気が悪いくらいで、平穏無事であった。それが毒塵壺の失態が、数十年のまやかしの果てに、地震と津波によって馬脚を現した。それを何とかして、東北を建て直すためにひとつのところを圧勝させてみたら、誤魔化すばかり。税はあげる、景気は冷やす、金子はばらまく、あげくは外遊していらぬことをしゃべり、彼の地で働く日本國のものは一萬人を超える。彼らを危機にさらした。全く腹立たしいことこのうえない。」
「まあ、天善様、あきんどのお茶のような濃い目の茶を飲んで、しばし忘れるといたしましょう。きっと必ずばちがあたりますよ。それが民も痛い目を見るばちかもしれませんが。」
「うむ。悪くない。」
「たぶん。ここまで安いものは競争も熾烈だと思うのです。九州の名もないところのものですが、なんとか江戸の市場に名がないながらも食いこんで行こうと薄利でやっておるのでございましょう。」
「ところで商いの方はどうじゃ。」
「毒塵壺の件以来、日本はどんどん悪くなったのではありませぬか?昔でしたら遷都を考えねばいけないほどのことであると思いますよ。悪政の世でございましょう。」
「そう言えば、何日か前、ちょうど彼らの聖者を愚弄した者がいることで知られる阿波の國で地震があったな。電磁砲弾列車が走る予定の天竜川のあたりでも地震があった。あそこはフォッサマグナのあたりであるから、何か地震が来たら桁ちがいになろうな。」
「天を味方に付けていない気がいたしますようで。」
「余もそう思う。」
「どうも心晴れぬ世の中じゃ。そこへくわえて取税人の季節も近づいておるしな。」
「どうです。天善様もいずこへか旅にでも出られては?」
「そのような余裕はないな。ただ忙しさに埋もれるのみじゃ。それより思うことがあるのだが、もし、どこかで新たに毒塵壺が破裂するようなことが起こった時、我々は逃げられるであろうかな?通行手形をお上が取り上げるのではないかな。」
「ありえることでございますな。それよりも、避難をするもの、國を出たがる者が万の桁にでもなれば、どこの國も受け入れてはくれないでございましょう。」
「おぬしは妻女がむこうの人である故、彼の國の飛行客船の切符は優先的にとれたとか申しておったな。」
「さようでございます。相馬藩の毒塵壺の一件のとき、飛行客船は満席でございましたが、彼の國に家族のある三親等の者までは無条件に優先的に席が取れてございました。かの國では、そこにいる自國民を脱出させるのが急務と考えておりましたゆえ。」
「立派じゃな。この國では地震でも道路を閉鎖して、民をどこへも逃がさず、自宅で果てさせるつもりであるからな。幕府の失態で住めないような状況になっても、空の船の港までもたどり着くことも出来ぬ。」
「しかし、このようなことは続かぬと思います。やがて、どういうことかわかりませぬが、『ばち』が当たると思います。天善様の世代までは『ばちが当たる』と言いませんでしたか?」
「そう言えば、『ばちが当たる』などとはずいぶん久方ぶりに聞いた。」
「わたくしはそういうものはあると思いますよ。」
「世の中、多くの要素がからみあって、なかなか本筋が掴みがたいものだが、悪い奴はそれを逆手にとって、どんどんなし崩しに悪い方へ引きずってゆこうとする。
五年前までは少々景気が悪いくらいで、平穏無事であった。それが毒塵壺の失態が、数十年のまやかしの果てに、地震と津波によって馬脚を現した。それを何とかして、東北を建て直すためにひとつのところを圧勝させてみたら、誤魔化すばかり。税はあげる、景気は冷やす、金子はばらまく、あげくは外遊していらぬことをしゃべり、彼の地で働く日本國のものは一萬人を超える。彼らを危機にさらした。全く腹立たしいことこのうえない。」
「まあ、天善様、あきんどのお茶のような濃い目の茶を飲んで、しばし忘れるといたしましょう。きっと必ずばちがあたりますよ。それが民も痛い目を見るばちかもしれませんが。」