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Channel: 英国式自転車生活
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人間中心思想の終焉

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ここ25年ばかりの間に、世界で起きたことを考えると、今は非常に大きな推移期であると思う。

最初は新しいタイプの富裕層の登場。バブルがあったり、そのあとの経済の波を巧く泳いで巨額の富を得た人たちの出現。

かつて、フェルメールの時代にチューリップの球根を巡るバブルがあって、オランダでその相場の暴落で経済がハチャメチャになった時がありましたが、それ以外に、中世から現代までで、かくも『虚業でもって巨額の富を得た人たちが多数出た時代はなかった』と思う。

数年前、ドキュメンタリーで、自宅の部屋に巨大なテレビスクリーンをいくつも置いて、一日に億単位の金を動かし、数千万円を稼ぐ若い人が出ていた。見ているとまるですべてが仮想のゲーム。食事はカップ麺をすすっていた。

ソロスなどは、一つの国の予算ほどの金を動かしていたという。

メディチはイタリアン・ルネッサンスの文化、絵画、建築を花開かせる後ろ盾となり、コジモはそういう文化人たちに思うさま才能を伸ばしてやる援助をして、『善の実行には金が必要だ』と言ってのけた。

バッハにはブランデンブルグやゴールドベルグをはじめとする貴族がいて、ベートベンにはワルトシュタインやエステルハージーがいて、ワーグナーにも国王から大富豪ベーゼンドンクがいた。みんな『ある意味実業家』でした(笑)。

そういう現代の虚業富豪が何か文化的モニュメントを打ち立てた例を私は思い浮かばない。

80年代、バブル期にそれまで絵画などに興味をもったこともない人たちが絵を買い始めた。美術的教養がないものだから、みんなが騒ぎ、新しいと言われるものを買った。ウオーホールとかリキテンスタインの絵が売れた。

ディック・トレーシーのマンガの一コマを巨大な絵にして芸術だと強弁した(笑)。

あの時期のアメリカ映画、シガニー・ウイ―バーとメラニー・グリフィスが出ている映画の中に、主人公がウオーホールに描かせたという絵が出てきていた。彼自身、セレブが大好きなスノッブだった。

そのアンディ・ウオーホールが自分の部屋には彼の同時代の家具や自分の絵画、自分の仲間の絵画は一つもなく、彼自身は150年前~250年前の家具や絵画にしか美を認めていなかった。死んだときは天文学的な遺産を残した。一方で使えそうな他人の仕事は、ビルいっぱい、ピザ屋の箱からチラシなども集めまくった。私は彼の初期のイラストを見たことがありますが、私はあれは彼は原案をヨーロッパのイラストから持ってきていると思った。それは彼の思わせぶりな後期の作にもやり方は通じていると思う。これほどの偽善、芸術家としての不誠実があろうか?

彼のインタヴューを見ると、彼自身はおどおどしてしまって、ほとんどまともにしゃべることができない。彼のマネージャーがかわりに話していました。

どうも、一部では美術品は株券になったような雰囲気がある。

「何がなんでも新しいものを!かくして現代美術はゴミ溜めになる」とダリは言った。

さて、科学はどうか?自動車をはじめとして、多くの人間の経済活動、消費行動で、地球の気候は激変して、さまざまなウイルスも変化して、日本ぐらいでも、ヘチマ棚の下で昼寝などしていたら、デング熱やオーストラリアから来た毒グモにやられかねなくなってきた。抗生物質の使い過ぎでクスリの効かない結核菌もあらわれた。インフルエンザも変異している。エボラも猛威をふるっている。

ゲンパツはチェルノブイリも日本も、収拾はつかず、先が見えない。

『科学は人間が考えるほど順調に進歩するものではない。分野によっては科学的解決方法がない』というのが明らかになった気がする。

その昔、アラスカで火山爆発があって、飛行機が飛べなくなったことがありましたが、あれから30年ほど経って、いまだに火山の爆発したあたりを飛べるジェットエンジンはない。ここ数日の日本でも、噴火する火山の近くへ飛んで行けるヘリコプターは存在しない。これから100年経っても存在しないでしょう。そういう中でエンジンが詰まらず、軽自動車ほどの石が飛んできても平気な飛行する機械というのは物理的に考えられない。

私が最初に『人間の科学では火山の噴火をとめることすらできない』と活字にしたのは2004年でした。これはたぶん300年後にも変わっていないと思う。また止める必要もない。地球で地震も火山活動もなくなるというのは、月や火星のようにこの惑星が死の星になるということですから。それと共に生きるほかない。

富士山は休火山ですから、いつかはまた噴火する。そうするとそこから直線で100kmほどの東京にも火山灰が降る。キャブレターは詰まって自動車は動かない。火山灰は細かいガラス質なので、それは様々な電子機器に入ってそれを破壊することがわかっている。今私が使っているこのラップトップのキーボードも、冷却モーターもやられる。雨が降れば、火山灰でツルツルにすべって自動車も走れない。

人間が宇宙の中心となり、人間だけが大事、科学がそれを何とかする、ということこそ、非科学的な思想はない。

これは巨大化する虚業の経済活動もそうですが、これらはどちらも人類を滅ぼしかねない。その本性はなにか?というと、きわめて非文明的な野心だったり、自我肥大だったり、我欲だったり、権力欲だったり、支配欲が、科学とか倫理の皮相な『化けの皮』をまとったものだと思う。

そういうなかで、どういう科学技術の使い方を選び取り、どういう文化的価値に賛同するかに、形に見えない文化を保ち、破滅に向かうか、成熟に向かうか、選び取らないといけないところへさしかかっているように思われる。

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