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Channel: 英国式自転車生活
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ランス・アームストロングの本

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昨日、ずっと横目で見て気になっていた『偽りのサイクル』堕ちた英雄、ランス・アームストロングを買いました。けっこう高い本ですが、かなり面白い。


英国ではずいぶん前から雑誌や新聞がランスの疑惑を取り上げていたので、2003年ぐらいから私の耳にも入っていました。サンデータイムズやサイクリングプラス誌も取り上げていました。

一般の人にも『どう思うか?』とけっこう訊かれた。ただ、その当時は、その『ドーピングの手口』がはっきりわからなかったので、一般の人は「相次ぐドーピング・スキャンダルを帳消しにするために、ガンを克服したアームストロングを美談として勝たせるためにみんなで八百長やっているのではないか?」という考えの一般の人が多かった。よく訊かれたのは「あれはFIXEDか?」ようするに「台本のある八百長か?」という質問でした。

この『偽りのサイクル』はよく調べられている。この本の中で英国人のジャーナリスト、デイヴイッド・ウオルシュをアームストロングが最も嫌っていて「あのいまいましいトロール船」(情報集めの)と呼んでいたことが書かれている。私が彼の勝利に眉唾だったのは、英国経由の雑誌情報だったことがあると思う。

いや~、なかなか赤裸々で興味深い。ランスが妻のクリステインと離婚したのは、彼のメカニック兼個人秘書のアンダーセンによると、チームのバスの窓をたたいている大勢の女性たちの恩恵をランスが望んだからだという証言がのっている。しかもその時、別れさせらる妻は「ドーピングのことに関しては一切の質問に答えないこと」という秘密保持誓約書にサインさせられていたという。洩らせば、たとえ、それが公的な法律的な場であっても、妻は秘密漏洩でランスに訴えられる手はずという盤石の固めをやっていた。

なんという男かな、と思う。

その手口が彼の周囲の人たちの証言で実に克明に描かれてあります。ポスタルのエマ・オライリーが、彼女の化粧品で(ファウンデーションか?)ドーピングの注射あとを消した話とか、けっこうリアルです。

タイラー・ハミルトンが血液ドーピングをしたとき、保存してあった自分の血液が変化していたのか、ものすごい悪寒に襲われ、吐き気がして、頭が割れるように痛く、脳みそを果物ナイフで剥ぐように、脳を剥がれている感じがしたことがあったという。ハミルトンはSHIにそこなった。

アームストロングはチームメイトを、そういう生命の危険にさらしつつ勝つために組織的にドーピングをやっていたということでしょう。

ランディスが自分の自転車のフレームが壊れたとき、代わりのフレームを要求したら、断られた。ランスがジェット機で移動するくらいなのに、どうしてそんな資金がないのか?ランディスが疑問に思って調べると2004年だけで年間120台の自転車がスポンサーから支給されていたが、そのうち60台が行方不明になっていたという。一台3000ドルの自転車が60台。ランディスはピンときた。それらを横流しで売った金でドーピングの資金に充てていたことを。ブリュイネールとランスは余計なことを嗅ぎまわったランディスを罰するため彼の血液バッグを試合の前に捨てた。

このランディス、コロラド大学の運動科学の博士号保持者でトレーナーであったアラン・リムによると、ランディスのほうがアームストロングより、すべての身体能力の面で上だったという。ドーピングさえなければ、ランディスはツールを連勝してもおかしくなかったという。

この本はクジラのように捨てるところがないほど情報満載です。もう、些細な点も面白い。たとえば、ランス・アームストロングが、UCIに、『サドルの痛みのため』としてコルチゾンを使うと申請していて、じつはそのコルチゾンは別用途だったという話。

そうしてみると、ツールの選手のやっているように走れば、突如、ドロップハンドルの自転車に乗る時のサドルの痛みがなくなるなどということは金輪際ないということでしょう。UCIも「サドル痛み治療薬」として認めているんですから。

私はますます、楽なバネ入りB67への傾倒とそれを使い続けることに自信を深めました(笑)。

痛いサドルには股間にワセリン塗って、コルチゾンを飲んで、それがランス流なのかも知れません。

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